データサイエンス演習|Group 10 Bravo

失点で「試合の流れ」は変わるのか

「流れ」をチームのプレーぶり31項目として表し、1試合の時間変化と、多数の失点場面を重ねた結果の両方から調べました。

判断できない 現在の結論
条件を厳しくするとAUCは0.52/0.48。現在のデータでは、失点が原因で流れが変わるとは判断できません。
目的失点後にチームの「試合の流れ」が変わるかを調べる。
使用データStatsBomb公開イベントデータ。スペイン1部2015-16年、全380試合。
手法失点前後の実プレー3分を31項目で表し、ロジスティック回帰が前後を見分けられるかをAUCで評価する。

まず、1試合を再生してみる

学習に使っていない実在の試合を30秒ずつ進めます。得点を隠したまま、モデルの判定値がどこで動くか確かめてください。

この試合は学習から除外
--:--得点を非表示
速さ
--%
選択したチーム

直前の実プレー3分が「学習した失点直後のプレー」に近いとする判定値

この時点の判定に強く効いた項目

再生すると、試合時刻と判定値が動きます。

多数の失点を重ねると、再開直後に山ができる

1試合だけでは上下が激しいため、同じ条件を作れる428失点を平均しました。線が平均、帯が95%信頼区間です。

失点前後の判定値の推移

失点前の実プレー3分と、再開後に1分ずつずらした実プレー3分

実際の失点失点のない時刻
読み方:最初の山には、失点後のキックオフやチーム・試合状況の違いも含まれます。似たシュートや同じチームまで揃えると判別できないため、「山がある=失点が原因」とは言えません。

似たシュートでは、何を分類したのか

3分間そのものを一つだけ入力したのではなく、各場面で「後3分 − 前3分」の31項目の変化を作り、ゴール場面とセーブ場面を見分けました。

1組のデータを作る流れ

失点前
実プレー3分
ゴール
キックオフ後の
最初の攻撃を除く
その後の
実プレー3分
セーブ前
実プレー3分
枠内シュートを
セーブ
そのシュートを含む
攻撃の終了後から
その後の
実プレー3分
各場面で作る入力
31項目の「後 − 前」
ロジスティック回帰が
「ゴール場面/セーブ場面」を判定AUC 0.628

AUC 0.628は、ゴール場面とセーブ場面を無作為に一つずつ選んだとき、分類器がゴール場面の判定値を高く並べる割合が約62.8%という意味です。「プレーが62.8%変化した」「62.8%の試合で流れが変わった」という意味ではありません。

似たシュートの比較条件を厳しくしたときのAUC。広い291組で0.63、シュート条件と失点前を揃えた68組で0.52、同じチーム内79組で0.48。黒い縦線は95%信頼区間。

黒い縦線は95%信頼区間。広い291組ではAUC 0.63ですが、条件を厳しくした0.52と0.48は、見分けられない基準の0.5を含みます。

なぜ「判別できる」から「判断できない」に変わったか

一度出た良い数値を結論にせず、モデルが何を見分けているのかを順番に確認しました。

AUC 0.703 失点前3分と再開後3分は見分けられた。失点後の平均判定値は0.572。
0.572 ≒ 0.565 失点のない後半開始でも同じ水準。最初の攻撃を除くと0.515となり、失点のない時刻の0.503に近づいた。
AUC 0.522/0.482 シュート条件・失点前のプレーを揃えた比較と、同じチーム内の比較では見分けられなかった。
比較組数AUC[95%信頼区間]並べ替え検定のp値読み方
試合条件とxGを揃える2910.628[0.581–0.689]0.0002広い条件では弱い違いが見える
シュート条件と失点前も揃える680.522[0.414–0.630]0.7090.5を含み、見分けられない
同じチーム内で比較する790.482[0.383–0.582]0.7440.5を含み、見分けられない

p値は、失点とセーブのラベルをチームまたは試合単位で入れ替える並べ替え検定から計算。広い比較のp値が小さくても、条件を厳しくした比較で再現しないため、失点そのものの影響とは判断しません。

この研究で使う言葉

試合の流れ
パス、ボールを持つ時間、プレー位置、守備、プレー量・速さで表したチームのプレーぶり。
実プレー3分
イベントとその継続時間をつなぎ、10秒を超える空白を停止として除いた180秒。公式計測ではなくイベント列からの近似。
xG(得点期待値)
位置・角度・体の部位などから計算した、そのシュートが得点になる確率。

分析方法

データ
StatsBomb公開イベントデータ
スペイン1部2015-16、全380試合
入力
パス、保持、位置、守備、プレー量・速さの31項目
機械学習
ロジスティック回帰。欠けた値の補完と尺度調整を含む
評価
同じ試合を学習と評価に混ぜない5分割。AUCと95%信頼区間
31項目は何を表しているか
パス
成功率、平均距離、ロングパス・浮き球・前向きパス・クロスの割合、平均位置
保持と運び方
保持率、キャリーの距離・前向き割合、ポゼッション数、1回あたりのイベント数・パス数
攻撃
シュート数、xG、シュート距離、相手ゴール側3分の1でのプレー、ペナルティエリア進入
守備
プレス・守備行動・クリア・ファウルの回数、プレスと守備の位置、カウンタープレス
プレー量・速さ
実プレー1分あたりのイベント・パス・キャリーなどの回数、同じ保持内のイベント間隔
入力しない情報
得点時刻、チーム名、点差、ゴールそのもの。停止時間も入力しない。
失点とセーブをどう揃えたか

比較相手はランダムな時刻ではなく、枠内シュートをゴールキーパーが止めた場面です。前後半、点差、ホーム/アウェー、シュート種類を揃え、時刻差8分以内、xG差0.10以内で組にしました。

厳しい比較では、さらにシュート位置、体の部位、相手順位、失点前3分の31項目、前6〜3分から前3分への変化を近づけました。失点側とセーブ側の両方で、場面後の最初の一続きの攻撃を除いています。

実プレー時間の定義と注意点

イベントに記録された継続時間をつなぎ、同じポゼッション内でも10秒を超える空白は停止として数えません。固定した180秒分のプレーを集めるため、スローイン待ちや得点後から再開までの停止時間そのものは入力に入りません。

これは公式の実プレー時間ではなく、イベント列から作った近似です。ボールを長く運ぶプレーの継続時間はイベントに記録されたdurationを使うため、単純に「イベントから次のイベントまでをすべて停止」とはしていません。

この分析から言えることキックオフを含む失点直後には、機械が検出できる特徴がある。ただし、その大部分は再開方法の特徴である。
この分析からは言えないこと失点そのものが原因で、チームのプレーぶり全体が変わったとは判断できない。影響がないと証明したわけでもない。
結論:広い比較では失点後のプレーに弱い違いが見えました。しかし比較を厳しくすると再現しないため、現在のデータだけで失点が原因とは判断できません。今回の中心は、1指標を選ばず「流れ」を判別問題にし、1試合・多数試合・比較条件の三段階で結果を検証したことです。